業績の分析で、例えば、「収益性が低下している」という結果を得られても、これは「組織が効率的に動いていない状況」を客観的な数字で表しただけにすぎず、このような状況の具体的な症状やそれを引き起こしている要因(例えば、失敗により処遇が下がる人事制度など)までは明らかになっていません。要因が分からないと、この状況を改善する為の人事管理上の施策を的確に導きだせないので、組織の分析は、業績の分析結果を踏まえて、これらの点を明らかにするために行います。
「組織が効率的に動いていない状況」
とは、具体的にどういうことなのか?(例えば、社員の仕事に取り組む姿勢が消極的)
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そのような状況を引き起こしている要因は何なのか?
(社員は、失敗により給与を減らされることを恐れて、積極的な行動を控えている)
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「状況」を改善する為に有効な施策は何なのか?
(挑戦した結果の失敗は、高く評価し、給与は減らさないことにするなど)
組織の分析では、組織の構造、風土から業績に与える課題を明確にします。
組織とは、さまざまな仕組みによって運営され、人々が協同し、一つの目的を達成しようとするものです。何ら仕組みの無い人の集まりはただの群集です。
組織構造の分析では、企業の中には、どのような仕組みがあって、それらが有効に機能しているかどうかを確認します。
組織構造の分析では、組織構造を次の4つの視点からとらえます。
「どのような仕組みがあるか」については、社内の諸規程や事業計画の策定・評価の過程をみれば事実の把握ができます。
「仕組みが有効に機能しているか」については、事業の分析を参照しながら、
事業構造の分析で行うSWOT分析の「強み」として分類される仕組みがあるか、「業績」の悪化の要因となっている仕組みの運用はないかなどをみます。
そして、事業の効率的な運営に向けて、どのような「組織構造」が必要とされるのか、あるいは「組織構造」を有効に機能させるためには、どのような整備が必要なのかを検討します。
企業の組織には社員の間で共有化されている価値観や行動様式というものがあります。そして、この価値観や行動様式は、実際に組織内の意思決定や職務行動に影響を与えています。
例えば、経営者と社員の間に「チームワーク重視」という価値観が共有化されていたら、その企業は「家族主義的な」組織風土をもつことになるでしょうし、社員は個人よりも部門の目標達成を優先した職務行動をとることでしょう。
この価値観や行動様式が組織風土です。組織風土とは、規程などの形で明確に示されるものではなく、社員の行動を外からコントロールするものでもありません。しかし、それは、確実に社員の価値観や意識に影響を与え、社員の行動をコントロールします。組織風土の形成には、経営者の思想、事業内容、会社の歴史などが関係してきます。
組織風土の分析では、組織構造(ハード面)の四つの要素(共通の目的、役割の分担、運営システム、コミュニケーション)が、社員の意識や行動(ソフト面)に与えている影響をみながら、組織全体の特徴をとらえます。又、組織風土になじまない人事管理は、基本的に機能しないので、確認できた組織風土が、事業構造、人事制度と整合性がとれているのか、業績にはどのように影響しているのかも確認します。