人事管理の現状分析

6.人事制度(等級制度・評価制度)の分析

 

人事制度とは、一般的には社員に関わる全ての制度を指しますが、ここでは、人事制度の中でも等級制度と評価制度の分析となります。


1.等級制度の分析

日本の企業では、一般的に社員を能力発達段階や付与される役割に応じた等級、資格、職級などの複数の階層に区分けをして、職務(仕事)の割り振りや処遇の決定を行う制度を導入しています。ここでは、これを「等級制度」と呼ぶこととします。

 

等級制度は、大きく分けると次の2つのものになります。

 

●職能資格(等級)・・・職務遂行能力に応じて資格等級を定めて社員を格付けする制度

 

●職務・役割等級・・・組織における職務(仕事)の価値や職務遂行上の責任・権限の大きさによって
           社員を格付けする制度

 

 

両制度の違いは、資格(等級)と役職との対応関係に大きく表れます。

 

●職能資格(等級)・・・能力の発達段階である「等級」と組織における役割を示す「役職」は別の物
            という考え。
            例)「等級」が上昇(昇格)しても、「役職」は変わらない(昇進しない)
            ことが起こりうる。


●職務・役割等級・・・「等級」も「役職」も組織における役割に応じて設定されるので、両方の動き
            は基本的に一致する。
            例)「等級」の上昇(昇格)に伴い「役職」も上昇(昇進)する。



  職能資格と職務・役割等級の特徴

  職能資格 職務・役割等級
等級の数
一般的には6~9等級。 職務・役割に応じて等級数はさまざま。
職群やコース制等の区分、職種の区分
「能力開発」のパターンとしてコース制等を導入する場合がある。職種横断的に等級を定める。 「職務・役割」ごとの職群を管理することがある。職種ごとに等級が設定される場合がある。
等級の定義・基準 「~ができる」や「~する能力レベル」等のように職務遂行能力を基準とした表現となる。 「~する職務(役割)」あるいは「〇〇部長」のように職務名や役割が具体的に記述される。
役職と等級の対応 役職と等級とは幅広く対応する。 役職に応じて等級が決まる。
昇格・昇進及び降格の基準 昇格と昇進とは切り離される。 昇格と昇進は一体である。

 

 

等級制度が有効に機能していれば、昇格・昇進に対するインセンティヴが働き、社員のやる気の向上や効果的な人材育成が図られます。

 

逆に、この制度が有効に機能していないと、例えば、同じ等級に長く留まっている社員のモチベーション低下、社員が昇格や昇進に対する不透明感を感じ、やる気が低下するなどの問題が生じます。

 

又、等級制度は、給与決定の基準であると同時に、事業運営に必要な能力を持つ人材、各職務・役割に就くべき人材を「確保・育成」するという機能を持っています。この人材の「確保・育成」の実現が十分でない。例えば、特定の等級の在級者が多くなったり、特定の職務・役割の人材が不足しているのであれば、自社の等級制度の問題を抽出し、その改善策の検討が必要となります。

 

等級制度の分析では、このような問題やそもそも自社の等級制度は職能資格(等級)と職務・役割等級のどちらの仕組みになるのか、現在の等級制度が自社の事業構造・組織構造に適しているのかなどのその他の問題が生じていないかを確認し、もし等級制度がきっかけとなって問題が発生しているのならば、それが規程等に定められている「仕組みの内容」により一貫性や矛盾の問題が生じているのか、昇格の決定や評価点の調整などの「実際の運用」により生じているのかを分析して、その解決の方向性を検討します。

 

 

 

 




2.評価制度の分析

評価制度とは、上司が部下の能力や行動などの仕事ぶりと仕事の成果を測定して、その結果を昇給や賞与、昇格や昇進及び能力開発などの処遇に反映させる仕組みです。そして、評価制度の目的は、上司が部下一人ひとりについての能力や姿勢及び態度を評価し、優れている点を認識してこれをさらに仕事に活用し、劣っている点やいけない点は指導して良い仕事をするように仕向けていくために行うものです。つまり、「人材育成と能力の活用により企業の業績を上げる為に評価制度を行う。」ということで、「昇給とか賞与を決める為だけに評価を行う。」ものではありません。

 

人は誰でも「他人から認められたい(評価されたい)」という承認欲求があります。その評価結果が自分への処遇に反映されるとなれば、承認欲求はなおさら強くなるものです。

 

又、評価制度は、「我が社では、どんな人材を高く評価するのか」という社員に対する企業のアピールになり、評価制度の内容や運用次第で、社員の行動や組織の雰囲気が大きく変わることもあります。評価制度が効果的に機能していれば、処遇に関する納得性が高まり、社員のやる気の向上が図れます。自社における開発するべき能力が評価項目において明示されていたり、評価結果がしっかりとフィードバッグされていれば、社員の能力開発も促進されます。逆に、評価制度が機能しないと、処遇に対する不公平感が高まり、社員のやる気が低下するなど組織管理上の問題が生じます。

 

評価制度の分析では、組織管理上の問題が生じたり、生じる前に、自社の評価制度の「仕組みの内容」と「実際の運用」について、現状把握、問題の抽出及びその改善策の検討を行います。